はくちょう座の散光星雲

久しぶりの更新であります。
基本、新しい星の写真が仕上がったらここのブログの更新を思い立つという感じですが、今回はゴールデンウィークに撮った素材ですよ。塩漬けにもほどがありますね。
2か月以上も前のものなのですが、まずは見ていただきましょうか…。

はくちょう座の散光星雲
2017年4月29日 23:15-27:18 2017年4月30日 22:56-27:28
【L画像】
Borg67FL+マルチフラットナー1.08xDG(7108) 合成f324mm F4.8 QHY16200A冷却CCDカメラ -20℃ HEUIB-II + TS Optics L Filter 露光300秒x74枚
【RGB画像】
Borg55FL+レデューサー7880 合成f200mm F3.6 EOS 6D SEO-SP4 露光140秒x154枚
合計露光時間 12.2時間
iOptron CEM60 PixInsight+PSCC
富士見高原スキー場、朝霧高原
Astrobinはこちらです。

昨年の8月にしらびそ高原ではくちょう座η星付近を撮って以来、サドル付近から南方向に広がる淡い散光星雲を撮ってみたいと思っていたので、春になってはくちょう座が昇ってきたらすぐに狙い始めました。

これが去年撮ったη星付近ですが、今回撮ったエリアの右下に当たります。 個人的には冬の間ずっと「はくちょう座はしか」と呼んでいました

幸いにして2晩にかけて都合よく晴れたので、冷却CCDとDSLRのツインによる6枚モザイクを撮ってきたのはいいのですが、そこから処理が思ったより大変でした

当ブログのモザイク処理は、こちらで紹介しているように、星図を台紙にして撮影データを貼り付けることにより、星表精度でひずみが取れたモザイク合成を実現しています。
マイクロソフトのICEやPhotoShopのPhotomergeでは、各フレームの重なり部分だけを頼りにして整列を行います。そのため、ひずみを完全に取り切れないために、重なり合う星が完全には重なっていなかったり、ずれがモザイクの端で拡大してしまったりして、正確な星の並びが再現されなかったりしますが、この方法であれば完全に星表精度で正確なレイアウトを得ることができます。
Astrobinに登録しても、モザイク処理結果がSky plotで必ず星座同定されるのは、この処理のおかげと言えます。
特に、LとRGBとで異なる光学系を使う当方の撮影法では、両者のマッチングを取るには必須の処理になっています。
しかし、今回はこのモザイクの各フレームのマッチング処理がうまくいきませんでした。
・ 収差による写野周辺の星がモザイクでマッチングしてくれない ・ モザイク処理で各サブフレームの輝度傾斜の整合が取れない
どちらも、このエリアが星雲と星が非常に密集していることが原因で、いつもの手法でモザイク処理がうまくいかなかったのです。
前者の問題は、Borg 67FLと55FLの両方とも、写野の周辺には特有のレンズの収差があってひずむのですが、通常の星空ではPixInsightのPlateSolveとStarAlignmentのひずみ補正でたいてい対処できていました。
しかし、このはくちょう座のエリアは星が非常に密集しています。星図とのPlate Solvingでひずみ補正するPixInsightですが、星が多すぎてもかえってうまくいかない場合があるようです。
この場合、写野周辺の星が、星が多すぎることによって選択されないのが原因のようでした。
解決法としてはDynamicAlignmentとManualPlateSolvingを使い、写野周辺の星を強制的に選択することによって、周辺ひずみを効果的に補正したレンズ補正モデルを作成することが出来ました。
後者の問題は、6枚モザイクの画面全体に広がる散光星雲や天の川が、カブリ補正を難しくしていました。
一枚一枚のカブリ補正は一見フラットになっているようにみえても、モザイク全体でみてみると最適ではない場合があります。
そのため、最終的なモザイク処理で、実際よりも暗く見積もられたフレームが落ち込み、不自然なレベルとなって合成されてしまいます。

上の画像は処理途中の例ですが、画像下部左側のレベルが不自然に落ち込んでいるのがわかります。 ちょうど、左右の画像の中央部に、天の川の端があり、大きな輝度傾斜が重なり部分にあるせいで、その傾斜の推定が難しくなっているようです。この解決にはてこずりました。
手動で意図的に傾斜を補正するのは簡単ですが、それでは画面の明暗の構造に作為が入ってしまう気がします。
幸い、RGB画像は、EOS 6Dのフルサイズに200mmのBorg 55FLで、L画像よりも格段に広い画角で撮影しています。
各モザイク画面が、L画像よりも重なる範囲が広いため、モザイク処理の精度が上がり、きれいにモザイクすることが出来ました。
下の図は、左がL画像の画角、右がRGB画像の画角です。RGB画像の方が圧倒的に広い画角をカバーしていることがわかります。

このため、RGB画像の方が、各サブフレームの重なりの比率が多く、モザイク処理の際に傾斜の推定の精度が上がったと考えられます。

(※上の画像は収差補正前の画像を使っているので、星の重なりがずれています。説明のため急いで作ったので手抜きしました

そこで、今回はこのRGB画像の傾斜画像を作り、L画像の傾斜画像から引き算して、L画像のカブリモデルを作成、これをさらにカブリ補正のデータとして使うことで、各サブフレームのフラット化を実施しています。
ちょっと手間がかかりましたが、この方法でやっとうまくいきました。
器材の都合でたまたま、RGB画像は広めの画角で撮影していたのですが、案外いいこともあるようです。
WO71でRGBを撮ることにしようと思っていましたが、思い直してまたしばらくは55FLで撮影しようと思います

Yahoo Blogの画像も貼っておきます。元画像は8,275×9,835ピクセルですが、こちらは縦2,048ピクセルに縮小しています。

9 thoughts on “はくちょう座の散光星雲

  • 2017-07-31 at 4:19 AM
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    おはようございます!
    塩漬け画像、私も4月のを先日アップしました(汗
    モザイク処理の手法私にはチンプンカンプンですが、高度な処理をして歪ない様にしているんですね!
    borgツインによるはくちょう座付近の精細なモザイクは一筋縄ではいかない事だけは学びました^^;

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  • 2017-07-31 at 1:57 PM
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    冷却CCD(L画像)+デジカメによるカラーアシスト、更にはそれの6枚モザイク!(@@)
    PixInsightを使ってるとは言え、異なる光学機器でよくここまでピッタリ合うものですね僕にはとても想像出来ない世界です。素晴らしいい!!!
    YKMさんの作品の独特な黒は自分好きなんですよねぇ(^^)こちらの作品は青ハロの影響なのか全体的にいつもの色味と少し違いますかね。
    嫌いじゃないですけど(^^;
    PixInsightでモザイク – 星表を使って歪み補正ゆっくり拝見させて貰います。
    PixInsight使ってないけど理解出来るかな?;(^^;

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  • 2017-07-31 at 5:55 PM
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    こんにちは。
    PixInsightは使ったことありませんが、複雑なことができるんですね。
    自分はフォトショップでモザイクをやりますが、おっしゃる通り結構ずれていて、最後は手動で微調整です。
    67FL+7885では周辺が結構肥大するので、周辺をトリミングしてモザイクをするのが手取り早やそうです。
    ところで、もし試したことがおありでしたら教えてください。
    67FLに7880ってやったことありますか?
    67FLと55FLってF値が確か同じなので、キョウエイさんに聞いてみたんですが、7880は55FL専用なので合わないのでは?との回答でした。
    いかがでしょう?

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  • 2017-08-01 at 12:40 PM
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    > さすらいさん
    こんな休眠ブログにコメントありがとうございます
    塩漬けにはしたいと思ってしてるわけではないのですが、何だかいろいろ構想していると手がつかないんですよね…。悪いクセです。
    広い複雑な構造がある領域のモザイクはムズカシイです。こんなにハマるんなら塩漬けしなければよかったと反省しております

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  • 2017-08-01 at 12:48 PM
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    > drag_on_demandさん
    休眠ブログにコメントありがとうございます(もういいってw
    正確にはこれ、カラーアシストではなくてハイブリッドかな。カラーアシストでは、冷却CCDでLもRGBも撮るのですが、飛んでしまいがちな星の色だけを、短時間露光のRGB画像で別撮り合成する方法です。
    カラーアシストもハイブリッドの1手法なので、ハイブリッドと言っておけばまずは間違いないかなと。
    黒好きですか、そう言われると嬉しいですね。いつもは19%ブラックを基準にしていますが、今回はかなり暗めですし、ちょっと赤い色づいてるかもしれないですね。
    PixInsightは最近マルさんもお使いのようですね。

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  • 2017-08-01 at 1:29 PM
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    > ゴットハンドさん
    コメントありがとうございます!
    モザイク合成でずっと悩んでたのは、星の並びが正確じゃなくなってしまうということでした。収差による歪みはいいとしても、モザイク合成のズレはなんとかなくせないか…。PixInsightでの合成方法を知ってから、やっと安心してモザイク画像に取り組むことができるなって感じです。
    上に紹介したモザイク手法紹介の記事で、最後に「差し障りありそうだからやめるか」と言っていたのは、Photomergeなどの手法をdisることになりそうだったからでした が、あくまで当社比、自分のこだわりです。
    ただ逆に、レンズ収差を取り除いて星図に輝度を置いていくこの手法がもはや「写真」と言っていいのか? という批判はありそうですね

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  • 2017-08-01 at 1:30 PM
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    > ゴットハンドさん
    それと67FLと7880についてですが、専用ですが67FLに使ったらどうなりますか? と、Borgに問い合わせたことがあります。答えは「専用品にしたのはそれなりの理由があるからで、おすすめはしません。ただ、許容する収差のレベルにもよりますので自己責任」とのことでした。
    従順なのでそれで試さないままにしていますが、センサーサイズによってもOKな場合があるかもしれませんね。

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  • 2017-08-01 at 6:15 PM
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    > YKMさん
    詳しいご説明ありがとうございます。
    写真とは・・という概念というか考え方というかこだわりは、皆さんのそれぞれお持ちなんでしょうね。ただ、天体写真がこれだけ進歩したのは、デジタルによる功績と、結局は何もないところから、常識やこだわりを捨てて取り組んだ先輩方の賜物と思います。感動するものを芸術というならば批判はつきものでしょうね。
    ところで、67FL+7880はメーカーでそんな回答があったんですね。
    よっぽとひどいんでしょうか?(笑)
    でも、自己責任というのも笑えます。そもそも収差を抑えられる補正レンズも作れず見切り発売した責任はどうなんでしょうか? 発売当初は皆さんの補正レンズの登場を期待していたようですね。
    と言いつつ、なぜか、そんな見切り発車、個人的には結構好きだったりします。何たってBORGで撮った写真を見るとしびれちゃうんですよね。(笑)

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  • 2017-08-03 at 6:05 PM
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    > ゴットハンドさん
    > ただ、天体写真がこれだけ進歩したのは、デジタルによる功績と、結局は何もないところから、常識やこだわりを捨てて取り組んだ先輩方の賜物と思います。感動するものを芸術というならば批判はつきものでしょうね。
    おっしゃること、よく分かります。確かにその通りですね。
    7880については言葉足らずだったかもしれません。55FLのような短焦点レンズのレデューサーの設計は難しく、共用設計で中途半端な設計にするよりは、55FLと組み合わせたときの性能を最大化することを優先した、というコメントも、同じメールに添えられておりました。ただ、55FL+フルサイズでも周辺は流れるみたいですけどね…。

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